よくある質問:素材の基礎知識
皮が革になる大切な時間
「なめす」手間ひまが革をうむ
「なめす」って言葉、良く聞くけど、どういう意味??
同じ読み方でもちょっと意味が違う「カワ」のお話し。
「皮」が「革」になるまでには過酷な試練が待ち構えているのです!
手間暇掛かる加工の全貌はコチラ!
1. 違い – 皮と革、具体的にはどう違う?
一般的に動物から剥いだままのかわの状態を「皮」と言い、この「皮」の毛を取り除いたり、防腐処理をしたりして、鞄や靴などに使えるように加工したものを「革」と言います。
そしてこの加工の工程を「鞣す(なめす)」と言います。
なめす事で腐ったり、乾燥してニカワ状になることを防ぎ、長く使用できるようになります。
2.鞣し – 長いものでは数ヶ月かかるなめし作業
一言で「なめす」といっても、仕入れから下準備、加工、仕上げまで、原皮から、製品革が出来上がるまで、なめしの種類によっては3ヶ月掛かる事もあります。
まず牛革のほとんどが輸入に頼っている日本。
海外から輸入される際原皮は、腐敗防止の為、塩漬けにされて入荷してきます。
次に、皮に着いた塩分や、汚れを取り除く為の水漬けの行程が待っています。
さらに皮の繊維をほぐし、なめしの効果を高める下処理などを施します。
「なめし」とは、太鼓と呼ばれるドラムの中で、動物の皮から毛や、脂、タンパク質を取り除き、なめし剤を染み込ませることで耐熱性を上げ腐敗進行を抑制する行程。
クローム鞣しの場合は1〜5日程度で済むが、タンニン鞣しの場合には徐々になめし剤の濃度を上げていくので長い場合には5ヶ月もの間、なめし剤に漬込まなければならないのです。
(クローム鞣し、タンニン鞣しについては後ほど。)
なめし終わった皮は、加水や乾燥で水分を調節し、染色や時には油分を加えて柔軟性を持たせたりと、複雑な後処理が待っています。
場合によっては再なめしを施す場合もあります。
最終的に革の余分な箇所を落としたり、塗装や型押し、アイロンがけによる艶だしなど、、、
とにかく手間の掛かる作業を施し、ようやく完成したものが「革」となるわけです。
3.種類 – クロームなめしと、タンニンなめし
そもそも何故なめすのか。
冒頭でも少し触れましたが、動物から剥がれた皮は、酸素や、栄養の不足により、すぐに腐敗したり、硬くなったりしてしまい、使い物にならなくなってしまいます。そこで、腐敗しやすい動物の脂を除き、たんぱく質 (主にコラーゲン繊維) を変性させたり、また、柔らかくするために主に合成の脂(リンスと同じ)を再度入れる(加脂)などをして、人類が考え出したのが「なめす」という方法だったのです。
原始時代、人類は自らの唾液で皮をなめしていました。古代になり、植物に含まれるタンニンを利用してなめす方法が開発され(タンニンなめし)長らく使用されてきました。
現在では化学薬品で処理されることが多く、主にはクロームなめし剤を使用します(クロームなめし)。
さらに、タンニンなめし剤とクロームなめし剤などの金属化合物を組み合わせたコンビネーションなめしという方法も用いられます。比較的安価なクロームなめしが主流でしたが、昨今の環境問題からタンニンなめしが見直されているのが現状です。
タンニンなめし
天然の植物(木樹の渋抽出した天然剤)を利用した製法で、手間はかかるがより自然な風合いが楽しめ(使い込むほどに独特の色に変化)、使い込むほど柔らかくなる性質をもつ。
長所
- 湿りやすく、乾燥も早い。
- 染料に良く染まる。
- 経年変化を楽しめる。
短所
- 傷がつきやすい
- 日光などにより日焼けをしやすい。
クロームなめし
合成剤(硫酸クロム、重クロム酸ナトリウム、カリウム塩、クローム塩など)を用いた科学的製法による鞣方で、革製鞄では8割をしめる。ソフトな風合いで表面に深い光沢がある。
長所
- 柔軟性、伸縮性に富んでいる。
- 傷が付きにくい。
- 色が変わりにくい。
短所
- 乾燥が遅い。
- 形保持力が低い。
混合なめし
2種類以上のなめし剤の特徴を生かし、用途毎になめしたもので、クロームなめしした後、タンニンなめしをした、野球グローブ用のグローブレザーが一例。コンビなめしともいい、逆にタンニンなめし後、クロームなめしすることを逆コンビという。
クロームとタンニンの長所を生かした革を作ることができる。
油なめし
動物の油脂で皮を鞣す方法で、耐水性に強い。セーム革がこれにあたり洗濯も可能。
オイルドレザー
動物油で皮を鞣す方法渋なめしする際にオイル分を多く含ませた革。
アニリン加工
なめしではなく染色方法色落ちしやすいデリケートな染色だが革がへたりにくいという特徴がある。
4.加工 – 最後の仕上げ・加工方法
ここまで、革がどのように作られてくるのかを説明しましたが、ここからは遂に最終仕上げに突入です。皆さんがよく目にしている革の状態、例えば型押しされているもの、ピカピカツヤツヤなもの、表面が毛羽立っているもの等々。最終的な加工の方法によっては様々な表情に生まれ変わるんです。そんな加工を施した革の一部をご紹介。
ヌメ革
タンニン鞣ししただけの染色も塗装もされていない革で革そのものの味わいがある。使いこむことで飴色に変色し風合いが増す。しかし、一般的には染色を施したものも含めて言うことが多く、色の種類も豊富。
銀付き革
一般にスムースと呼ばれ鞣して染色しただけの、銀面(表面)を活かした純正革。 本染め革とも呼ばれる。厚い革を2枚か3枚にスライスした一番上の1枚目(表面の付いている部分)を銀付き革と言い、2枚目、3枚目をそれぞれ一番床革、二番床革と呼ぶ。
スエード
革の床面(裏側)を細かく起毛したもの。
スエードよりも荒く毛羽立たせたものを「ベロア」と呼び、革の銀面(表側の面)を非常にきめ細かく起毛させたものをヌバックと言います。
型押し革
鞣した後、銀面に模様を加熱高圧プレス機でプレスした革で表面のしぼが特徴。
シュリンク
鞣し工程中に、特別な薬品を使って銀面を縮ませた革で揉んだ革よりもしぼが強調されている。
ブライドルレザー
タンニンなめしの後、長期間蜜蝋に繰り返し漬け込んでなめした耐久性の高い素材でブライドル(クツワなど馬具の総称)用に英国で開発された。ロウでコーティングされている為、変色や雨に対して強く、使い込むほどに光沢が益し、いつまでも頑強であるのが特徴。
オイルレザー
革に多量のオイル(動物油)を加えてなめす事により、耐水性、撥水性、柔軟性を持たせた革。水分による劣化が少なく、しっとりとした感触がある。独特の光沢、色むらと粗い表面が特徴。
ガラスレザー
鞣した後、ガラス板やホーロー板に張り付けて乾燥、銀面に磨き処理(バフィング)、合成樹脂塗装という工程でつくられた革で硬くてツヤがある。